夢の中へ 夢の中へ

三十郎バスタブ漂流記

これは、ボクがお正月の二日に見た夢の話です。ちょっと面白かったので、絵本仕立てにしてごらんいただきます。1月23日より12日連続。
(三十郎は、このブログでのボクのニックネーム)

その1

大晦日からお正月にかけて、子供たち孫たちがやってきました。
帰ってしまうと、ちょっとさびしくなって、
何だか疲れてしまって
風呂の中で、ついウトウト

その2

ゾクッ 
寒くなって目が覚めました
んっ 何だかヘン
見まわしてみると、そこは‥‥

その3

うっ 海? なっ なんで?
この状況 とても信じられません
お 落ち着いて  れ 冷静に
といって 冷静でいられるわけがありません

ここで どういう行動をとるべきか?
必死に考えて 選択肢を3つに絞りました
 1.水をかき出して このまま漂流し助けを待つ
 2.海に飛び込んで 陸地まで泳ぐ
 3.もう一回寝る(どうせこれは夢にきまってるから)

まず1を考えましたが、漂流するなら水は貴重
かといって水の中に浸かっているのは寒くって‥‥
2は論外 ボクは泳げないので‥‥
やっぱり3にしょうっと
一度眠って 目が覚めたらもとに戻っているはず
でもこの状況で 眠れるか?

その4

うーん やっぱりなかなか眠れませんね。
でも なんとか眠らなくては
ということで 
古典的な眠りのおまじないをやってみます。

羊がいっぴき 羊がにひき‥‥‥
えっ シカがいっぴき
カニがいっぴき
ニワトリがいちわ
なんだ こりゃ
リス‥‥スカンク‥‥

うわー クマが出たー

その5

うわー と目が覚めたところが
やっぱり海の上 しかも大荒れです
どうなってるのかわからないけど これは現実なのか?
もう一度 冷静に考える必要があります

このまま漂流もダメ 泳ぐのもダメ
睡眠作戦も失敗でした
となると 第4の選択肢
そうだ!
「神さまに祈る」 これしかありません

かみさま~ 助けて~

その6

カミさまー~ 助けて~

精一杯大きな声で叫びましたが この大きな海原です
ボクの声なんか 波の間に吸い込まれ
むなしく 砕け散るばかり

ところで
カミさま~って あまり意識せずに叫びましたが
これはもちろん 日本の神様を想定しています
キリストでもアッラーでもアフラマズダでもない

日本のカミさまは やおよろず(八百万)の神というくらいだから なんせ数が多い
あんまり値打ちがないな と普段思っているのですが
こんなときには心強い
八百万ということは 日本の人口1億2千万人として
単純計算で 神様一人当たり 日本人15人を
担当していらっしゃるわけです

これならきっと緊急時の目配りも行き届いているはず
いや待てよ 逆に 特有の無責任体制で
「お~い おっさんが助けを呼んでるぞ」
「めんどくせえな ま 誰かかが出動するんじゃないの」
「そうだな ほっとくか」
「ほっとけ ほっとけ」
てなことにならないともかぎりません

と 意味のない思考をめぐらせておりますと
んっ なんだ?
一筋の 白い 波の道が
ぐんぐんと ボクのほうに近づいてきます

カミさま? いや違うな
登場の仕方が カミさまっぽくないもんなあ
どうも いやな予感がします

その7

「ヤッホー」
「なんだ カメさんか」
「なんだはないだろ お前がカメさ~んて呼んだから
来てやったんだぞ」
「いやボクは カミさ~んて呼んだんだ」
「あっ そう。ほな帰るわ」
「い いや待って 助けてくれ
助けてください」
「なんか困ってるのか お風呂なんか入ったりしてご機嫌そうだけど」
「いや これは‥‥ 陸地まで連れて行ってほしいんだ」
「ふ~ん陸地までね 何くれる?」
「な 何でも カメさんの欲しいもの何でもあげるから」
「何でもあげる? 見たところ何も持ってなさそうじゃないか ええ加減なこというやつは信用でけんわ」
「あ いや たしかに今は何もない
けど できる限りカメさんの要望に沿うから」
「まあべつにオレは物が欲しいわけじゃないんだ
ほらカメは万年て言うだろ 長生きするとたいくつでね
面白い話を聞かせてほしいのさ カメが活躍する話をね」

その8

「う~ん 話といわれてもなあ しかも亀がでてくる話かぁ そうだ
昔むかし浦島という漁師がいました ある日浦島が海辺を歩いていると子供たちが‥‥」
「ま 待て ちょっと待て それは浦島太郎の話だろう お・ま・え・は・ア・ホ・か そんな誰でも知ってる話をしてどうする ましてや おれは亀だぞ」
「やっぱりだめか この話に後日談があるのももちろん知ってるよね」
「乙姫さまの病気を治すために カメが猿の肝を取りに行くってあれかい?」
「そうそう カメは肝とりに失敗したので 罰として甲羅を割られた と」
「ああ けど本当は亀は失敗したんじゃない 猿をわざと逃がしてやったのさ いかに病気を治すためとは言え 生きものの命を奪っちゃまずいからね」
「へえ 本当かい」
「ああ だからそれを知った竜王さまは 罰どころか亀に褒美をくださった それが1万年という寿命なんだよ」
「なるほど 知らなかった」
「ところがこれが微妙なところでね 竜王さまは娘の病気ファーストで考えない亀に腹を立てている そこで苦い褒美を亀に与えたのさ」
「苦い褒美?」
「そう 一万年の命というのがどれほど退屈なものか おまえには想像もできんやろ」

その9

「ところで あらためて聞くが おまえは何でこんな海の中で 風呂に浸かってんだ?」
「それはこっちが聞きたいよ 風呂の中でウトウトしてたら いきなりここに来ちゃったんだから」
「ふーん そのウトウトしてるとき 何か夢を見なかったか?」
「だから その時見た夢が海で漂っている夢で‥‥あっ ということは これはやっぱり夢なんだ」
「いや違うぞ これは現実だ 現実に生きているこのカメさんが言うんだから間違いないぞ」
「カメさん アンタが現実だという証拠はあるの?」
「いやそんなものはない 誰だってそれは証明できないさ」
「‥‥‥‥」
「これはね やっぱりおまえが願った結果だと思うよ おまえは心のどっかでこういうアホなことをやってみたいと思ってたんじゃないかい?」
「ボクが? とんでもない こんなとんでもないことを願うはずがないよー」
「いやあるのさ
同じは安全 同じは普通
違うは危険 違うは面白い
チラッとそんなことを考えた瞬間に 運悪く時空の歪みに引っかかってしまた まあそんなとこだろう」

「あ なんだか急に眠くなってきた」
「ああ オレもだ」

その10

カメさま~
助けて~ カメさま~

「おい カメさん起きなよ 誰か呼んでるぜ カメさん~って」
ヒフキアイゴの声に起こされて 見まわすと 海の底だった
さらに見まわして 自分のからだをよく見ると
ボクはカメだった
そうだった ボクはカメだったんだ
さっきまで ボクは人間になった夢をみていたような気がするな

カメさま~
助けて~ おっと 誰かが呼んでるな
ちょっと行ってみるとするか

その11

ボートに い やボートではないバスタブに乗って 助けを呼んでいたのは それはボクだった
そのボクは言った
「なんだ カメさんか」

その12

さて、最終回です。
結論から言いますと、ボクはなんとか無事自宅に戻ってまいりました。
どうやって? どんなルートで?
帰って来たのやら さっぱり覚えていません
少なくとも 3日は漂流していたような感覚です。
でもひょっとしたら、3か月だったかもしれず、
3年だったような気もします。
えっ、カメさんですか?
それがねえ ついてきちゃたんですよ
ホラ そこでマンガの本を読んでいますよ

ボクが「ドラゴンボール」の亀仙人の話をしたら
「それ見たい」と ついて来ちゃいました
なにしろ好奇心旺盛なやつで 
ここにある本を全部読むまで帰らないと
言っていますよ やれやれ

それでは このへんで