あの虫はなぜ嫌われる?

あの虫とは、言わずと知れたG=ゴキブリです。
いまボクが住んでいるマンションは、入居1年半ですが、その間に2度出没しました。アース・ゴキプッシュプロでシュッとやりましたら、その後は出ておりません。

なぜこの話を持ち出したかといえば、この本『犬のことば』を紹介したいからです。この本の中に、「ゴキブリはなぜ嫌われるのか」という一章があります。
著者の日高敏隆さんは、日本の動物行動学の草分け的存在であり、科学エッセイストとして重要な一人です。また、コンラート・ローレンツの訳者としても知られています。

本題に入る前に脱線しますが、ボクが学生のとき、一年先輩にTさんという人がいました。Tさんは、研究のために自宅でゴキブリを飼育していました。申し遅れましたが、Tさんもボクも学校では心理学の専攻です。
えっ、なぜ心理学の研究にゴキブリが必要かって?
行動主義の心理学では、ラットなどの動物を使って実験を行うのです。報酬(餌)の有無や、罰(電気ショックなど)の有無での、刺激と反応を観察します。人間の心理も、究極は「刺激→反応」という単純な図式に還元できる、と考えるのです。
ラットなどの実験動物は個人で飼うにはお金がかかるので、Tさんは代わりにゴキブリを飼っています。

「千匹以上いると思う」Tさんは言います。家の前に立つだけで「ブ~ン」と羽音が聞こえてきます。
Tさんの家はボクの下宿のすぐ近くなので、「寄っていけ」というのですが、ボクは怖くて入ることができませんでした。

さて、「ゴキブリはなぜ嫌われるのか」日高先生の本を読んでみましょう。

けれど、ぼくがふしぎでならないのは、どうしてゴキブリがこんなに嫌われるか、いいかえると、人間のとくに女はゴキブリをなぜこんなに嫌うのか、ということである。(中略)
もちろん、理屈のつけようはいくらでもある。あの平たい姿がイヤ。おまけにそれがす早く、ガサガサガサッと走るのがイヤッ。油ぎったあの感じがイヤッ。足が毛むくじゃらみたいなのがイヤッ。くさいからイヤッ。きたないからイヤッ。
このような理屈は、つづけていくとだんだんに説得力がなくなる。平たいのがザザッと走るのはたしかに不気味だが、足なんかがどのようになっているか、そんなによく見えるはずがないし、ゴキブリは走っているだけでにおうほどの悪臭は発していない。きたないかどうかは、まったく主観と情況の問題だ。(中略)
なんでわざわざ長々とこんなことを論じたかというと、「ほら、ゴキブリ!それ殺せ!」という反応は、いわゆる偏見にほかならないからである。

う~ん、偏見ですか。確かにね。論理的に攻められると、ゴキちゃんが他の昆虫と全然違うというわけではないんですが、でもやっぱりイヤッですよ。ボクは。

この本『犬のことば』には、もちろんゴキブリの話だけじゃなく、動物や虫たちの面白い話がいっぱい詰まっています。少しだけ紹介します。

ホタルはなぜ光るのか? 

アメリカのあるホタルについての研究なんですが、このホタルは地面に近いところを、波型に飛びます。波の谷から谷までの間は、時間にして6秒。雄はこの谷に近づくたびに、2分の1秒間黄緑色の光を発し、それとともに急上昇する。するとそこにJ字型の光が浮かび上がる。これがプロポーズのサインだというんだから、イキなもんじゃありませんか。

蝶はひらひら飛ぶ。

これも求愛行動のお話です。蝶の雄は、雌の翅の色を目印にして、配偶者たる相手を探します。ところが蝶はあまり眼がよくないんですね。あまり遠くのものは見えない。で、たとえば1枚の葉がさえぎっても、もう雌の姿は見えなくなってしまう。どうする?
そこで、ひらひらと舞いながら、すこし上から見たり、斜めから見たりするんです。それと同時に、お互いが見つけやすいように、翅は大きいほうが好ましい。そのため彼らは「二つ折りのラブレター」となって、ひらひらと飛んでいるわけです。(日高先生、うまいこと言うなあ)
こんな話がいっぱいです。このへんにしておきます。

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