初見参 村上春樹ワールド

 ボクは村上春樹さんの小説を読んだことがないのです。
「食わず嫌い」ですかね。まあ、それほど意識して避けてきたわけではないのですが、あえていえばタイトルに少々違和感を覚えたのかもしれません。『ノルウエイの森』『羊をめぐる冒険『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』なんて、なんかチャラチャラしとるのう、と。
 このたび、天の声が聞こえてきました。
「チャラチャラしとるのは、あんたのほうや。とにかく一冊読んでみたら?」
 声がしたのは、本棚のほうからでした。そうです。読んだことがないのに、我が家の本棚には、村上春樹本がけっこう揃っているのです。もちろんこれはケイコが残していったもの。ほな、読んでみよか。

『海辺のカフカ』村上春樹 平成14年9月 新潮社

さてそこで、今回選んだのは『海辺のカフカ』。

 読んでみた感想。一言でいいますと、「けっこう、ボクに合ってるんじゃないの」というもの。まず、読みやすいです。これは、深くも読める(たぶん)し、さらっと読み飛ばすこともできるということ。

 カフカという少年が出てまいります。
東京在住。15歳の誕生日、彼は家出をする。父に反発、書斎から現金40万円を拝借して、深夜の長距離バスにのる。行き先は四国の高松。途中でのいくつかのエピソード。いわゆるロードムービーですな。ついた先は小さな、そして不思議な私設図書館。
  一方、ナカタさんという、けったいなおっちゃんが出てまいります。

「こんにちは」とその初老の男が声をかけた。
猫は少しだけ顔をあげ、低い声でいかにも大儀そうに挨拶をかえした。
年老いた大きな黒い雄猫だった。
「なかなか良いお天気でありますね」
「ああ」と猫は言った。
「雲ひとつありません」
「‥‥今のところはね」
「お天気は続きませんか?」

 ナカタさんは、なんと猫語がわかるのだ。人に頼まれて、行方のわからなくなった猫を捜索することで生計をたてている。
このナカタさんも、ひょんなことから、四国を目指すことになる。手段はヒッチハイク。
 この二つのストーリーラインが、同時並行するわけですが、二人はどこかで出会うのか?どんなかたちで?それともすれ違い?
さあ、面白くなってきましたよ。
 というわけで村上小説に初見参。日本が舞台であるけれども、それがどこであってもよいような世界観。
 村上さんの小説が、世界中で翻訳されている理由が、ちょっとわかった気がします。(一冊読んだだけですが)

他に、こんな本も

『ヤクザ・チルドレン』石井光太2021年11月 大洋図書

 世に「暴力団」と呼ばれている人たちがいる。
 2020年度の警視庁の発表では、構成員・淳構成員合わせて2万5千9百人いるそうだ。
 この人たちにも、子供がいる。その子供たちは、いったいどんな人生をおくるのだろうか。
  親ガチャという言葉があるが、これは究極の負の親ガチャ。暴力、ドラッグ、差別、貧困、離婚、社会のあらゆる問題が全部家の中に詰まっている。それなのに、子供たちは、苦しいと声をあげることさえできない。地域も政治も警察も、力になってくれないとしたら‥‥。
 まことに読むのがつらい本で、「ああ、何にもできないな」と傍観者のまま読み終えました。

『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』スズキナオ 2019年11月 スタンド・ブックス

 スズキナオさん。東京で会社員をしていたが、30代半ばでライター業に転職。同時に大阪に引っ越した。
 実家は東京にあるので、深夜バスを利用して、大阪東京を行ったり来たり。他の土地にもバスで出かけて、いろんな体験をして、それが一冊の本になった。これが、な~かなか面白いんですよぉ。
 その中で、エピソードを一つだけ紹介します。

 スズキさん、あるところで「鏡広告」の話を耳にしたんです。「鏡広告」というのは、銭湯の壁面に貼ってある鏡──男の人なら、それを見ながらヒゲを剃ったりする──にスポンサーがついたものです。鏡のかたわらに社名と簡単なキャッチコピー、電話番号が入っています。
 ここでちょっと、こっちの話なんですが、実はボクの家は昔、ガラス・鏡の製造販売業をやってたんです。そういえば、子供のころ、広告の入った鏡を見たことがあるなあ、と思い出しました。
 で、スズキナオさん、「鏡広告」のことを調べてみようと思い立ち、実際に広告を発注することにしました。
 その途中でわかったことですが、鏡広告の制作や取付は「近畿浴場広告社」という会社がやってくれるとのこと。大阪府八尾市にあるこの会社に、スズキさんは出かけていきました。
 出迎えたのは、江田ツヤ子さん、82歳。全盛期には15人の社員がいたそうだが、7年前に夫秀明さんが亡くなったあとは、ツヤ子さんが一人で運営しているという。なかなか、へえ~な話でしょ。
 スズキさんは、人柄がいい。人の話を素直に聞いて感動する名人だ。

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