2月11日は、ノムさんこと野村克也氏の命日です。おとどしですから、三回忌かな。
 このところ、高津監督、矢野監督、新庄ビッグボスなど教え子たちの活躍もあって、ずいぶんと持ち上げられていますね。ボクとしても、実にうれしい限りです。

 これは、ボクが持っているLPレコード。ジャケットのイラストは、つい先日亡くなった水島新司氏です。このときノムさんは38歳。プロ入り20シーズン目で、南海ホークスの監督、四番打者、捕手を務めていました。
 ボクはこのころからファンでしたが、実のところ現役時代のノムさんは、あんまりカッコいいとは思いませんでした。ネクストバッターズサークルでの立居振る舞いが、いかにももっさりしていました。捕手として致命的だったのは、肩が弱かったことです。
「おいノム、ボールにハエが止まっとるやないか」
などと、よくやじられてましたね。
 さて話を急ぎます。ノムさんは、選手として、監督として、野球評論家として、それぞれに素晴らしい成績を残していますが、ボクとしては、ノムさんの野球界への貢献の第一は「言葉」だと思っています。野球の技術論、戦術論、リーダー論、組織論、これらを著作、ミーティング、談話、解説、ボヤキなどの回路を通してアウトプットしていった。野球の奥深さ、面白さを多くの人に伝えるという仕事は、長嶋にも王にもイチローにもできなかったことです。

『野村ノート』野村克也 小学館 2005年10月

 この『野村ノート』は、数ある著作のエッセンス的な本です。ちょっと、何か所か拾ってみましょう。 

 ミーティングの最初に、私は挨拶代わりによく「はい、こんばんは。今日も知らないより知っていたほうがいいを始めます」といったものだ。
「考えたことがないのなら1回ぐらい考えておけ。それでも罰は当たらんぞ」
そんな言葉もよく口にした。結局、そういう“考える”という行為が選手にとってエキスになっていくのだ。

 野球は身体だけを使ってやるもんじゃないんだ。ノムさんの考えがよくわかります。

 フォークにクルクルとバットが回り、簡単に仕留められている打者がいる。必死に練習して打てるように努力をしているのだが、同じ結果をずっと繰り返している。こういう打者に「一度でいいから思いきってヤマを張ってフォークを狙ってみろ。一発叩き込んだら、もう相手は怖がっておまえにはフォークが投げづらくなるんだから」と指示を出すのだ。
 もっとも最近の若い選手はこの「ヤマを張る」というのを嫌がる。なんかずるいことをするような錯覚に陥るのだろう。何も悪いことはないし、ヤマを張る=賭けなのだが、子供のときから野球一筋でやってきた選手というのは、純粋で一途な性格の子が多く、正々堂々の勝負がかっこいいと思い込んで野球をしてきただけに、なかなか受け入れてくれない。そこで私は「ヤマを張れ」 ではなく「勝負してみろ」ということにした。そうすると「勝負? よし、やってみようじゃないか」と乗り気になる。

相手を見て法を説け。ノムさんも苦労している。
選手としてのノムさんは、本塁打王9回、打点王7回、首位打者1回、三冠王1回の記録を持っていますが、ちょっと変わった記録も紹介しておきましょう。
 それは、あの足の遅いノムさんが本盗を7回成功させたこと。
 通算1065盗塁の福本が1個、596盗塁の広瀬が3個、579盗塁の柴田は本盗0。相手が油断したこともあるでしょうが、これはかっこいい。そう思いませんか。

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です