大河ドラマ「光る君へ」スタート

 もしもあなたが生まれてくる時代を選べるとしたら、ただし、自分がどんな人間になるか、どの国に生まれるか、男として生まれるか女として生まれるか、どの宗教を信じるようになるかは前もってわからず、人類の歴史の中で生まれてくるのに一番良い時代だけを選べるとしたら、それはいまこのときだろう。
 これほど世界が健康なときはない。これほど豊かなときも、これほど教育が行き渡っているときも、いまより暴力が少ない寛容なときもない。

 これはバラク・オバマが1919年に行ったスピーチの一部です。

 たしかに、男だろうが女だろうが、農民だろうが戦士だろうがエンジニアだろうが山岳民族だろうが、「いま」に生まれるがもっともリスクが少ないでしょう。
 そこで、条件を少しプラスします。場所は日本に限ること。「いま」は選択肢から外すこと。さあ、どうですか?
 ボクは、案外平安時代が有力な候補になるのではないかと思います。江戸時代と並び、大きな戦乱が少ない時代だからです。
 けれどやっぱり男として生まれるのと女としてうまれるのとでは、大きな違いがありますね。紫式部は、下級貴族であった藤原為時の娘として生まれました。為時は勅撰集に和歌が採られる歌人であり学者でした。為時は息子の惟規(紫式部の弟)に漢籍を教えますが、惟規は読み覚えるのが遅く、すぐ忘れたりします。ところが、そばで聞いていた式部は、不思議なほど早く理解するのです。父の為時は「ああ、式部が男の子であったらよかったのに」といつも嘆いていたと言います。当時、紫式部がどんなに優秀であっても、女の身でその才を生かすことはできなかったからです。

ところがですよ、ときに歴史というものは面白いいたずらをします。日本の、いえ世界の文学史にとって、紫式部が女の子であったことは大きな幸運であったのですから。

Boy meets girl

 さて、NHKの大河ドラマ「光る君へ」がスタートしました。まずは、紫式部の少女時代から話は始まります。(定石どおり)
 少女時代の名前を「まひろ」といいます。まひろは、あるとき鳥籠で飼っていた鳥を逃がしてしまい、それを追ってかわのほとりまでやってきます。しくしく泣いているところへ、三郎(後の藤原道長)が通りがかり
「泣くな。よし俺が笑わせてやる」
と話しかけてきました。
 Boy meets girl!
もちろん、史実ではありません。いかに下級とはいえ、貴族の娘が一人で外に出るなどは、ふつう考えられません。でもこれが、大事な伏線なんでしょうね。これからこの物語は、まひろと三郎の関係を中心として進むことになります。

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