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大河ドラマ[光る君へ]第六回『二人の才女』

 この回の目玉となるエピソードは、もちろん、まひろ(後の紫式部)とききょう(後の清少納言)との出会いです。史実的には、この二人が会ったという記録はありませんが、可能性は大いにあります。
 ではどんな状況下で二人を出合わせるのが、もっとも自然なのか?
 まひろと三郎の出会いは、逃げた小鳥を追いかけて、でしたが、今度はそうもいきますまい。大石静さん(脚本家)のお手並みを拝見しましょう。

 まひろと三郎。この二人、どちらもこれまで、あまり政治向きのことには興味がないようでありました。とくに三郎。のちの藤原道長の権謀術策ぶりを考えると、ほんまかいな、と言いたくなるような淡白さです。

 ところが、少しずつこの二人に変化が生じます。まず、まひろ。
 まひろの身体のことを心配した父為時(ためとき)が、もう左大臣家の集いに行かなくてもよいと言ったのに対し、こう答えたのです。
「父上の拠り所が右大臣家だけなのはいやでございます。源(みなもと=左大臣家)とのつながりも持っておかれたよいのではありませぬか」
「うーむ、そこまで考えておったのか」
まひろが男であったなら‥‥との思いをますます強くする為時でありました。

一方の三郎。兄道隆(みちたか)の屋敷に出向き、こう注進します。
 「仲間に聞いた話ですが、藤原義懐(よしちか)が、公任(きんとう)や斉信(ただのぶ)ら若いものを集め、なにやら画策しているそうな。グループ結成の動きでは‥」
「ふーむ、よく知らせてくれた。しかし道長、お前は内裏のことには興味がなかったのではないか」
「はい、今でも興味はございません。しかし政(まつりごと)は帝を支える者こそが大事。義懐のやり方を見ていますと、父上のほうがずっと良いと思います」
 道長の変化に、思わずにっこりする道隆でありました。
そしてこの場で、義懐らの動きへの対抗策として「漢詩の会」が開かれることが決定。
この「漢詩の会」で二人の才女、まひろとききょうが出会うことになります。

 漢詩の会では、その進行を取りまとめる役として、学者二名が招集されました。藤原為時(まひろの父)と清原元輔(ききょうの父)です。二人とも、当代一流の歌人であり学者でありましたから、この人選に不思議はありません。それぞれのお供として、まひろとききょうが出席したのです。

会ちゅう、公任が披露した漢詩について、道隆がまひろに問いかけます。
「為時殿のご息女、いかがかな?」
「公任さまの御作は、唐の白楽天のような歌いぶりとお見受けしました」

すかさずききょう、聞かれもしないのにしゃしゃり出ました。
「私はそうは思いません。白楽天よりむしろその親友である元微子のような闊達な歌いぶりでした」

 ドラマの大きな流れの中で成立した漢詩の会。その漢詩の会にごく自然な形で出席した二人の才女。この設え、大石静さんお見事でした。
 この二人の関係、もちろんドラマの主糸というわけではありませんが、これからも面白いエピソードを生み出してくれそうです。ますます楽しみになってきました。

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