どこに行っても 私は嫌われる

大河ドラマ・光る君へ 第八回「招かれざる者」

この回では、道兼(みちかね)の苦悩が語られます。

藤原の道兼。右大臣藤原兼家の次男にして、三郎道長の兄。そして七年前、馬の前に飛び出したまひろに逆上し、止めに入った母ちやはを理不尽にも刺し殺してしまった、あの道兼です。

その節は、「気に食わぬことがあるとすぐ逆上する」「わがまま放題に育った貴族の坊ちゃま」「庶民の命など虫けら同然にしか考えぬ非情な男」という描かれ方でした。しかし、この人。思った以上に複雑なパーソナリティをお持ちのようです。

順番にいきましょう。
 兼家が倒れます。
 陣の定め(じんのさだめ)の席中のことです。陣の定めとは、関白以下、位の高い公家たちが政務について議論する会議のこと。今日の「閣議」と思っていいでしょう。
冒頭、義懐(よしちか)が、こう発言しました。

「帝の命により、当分の間、この陣の定めは取り行わぬことになりました。意見のある者は書面にて申し出るように、とのことでございます」

 義懐の階位は、権中納言。この席中では下っ端なのですが、花山天皇の寵愛を受け、側近政治を行っております。その上、陣の定めを停止となれば、政治は義懐の思うがままとなりましょう。
 兼家が激怒しました。 
「これより、帝をお諫めしにまいる」
と勢いよく立ちあがったとたん、よろよろと崩れ落ちてしまいました。おそらく脳の血管が切れたのでしょう。 死にはしませんでしたが、意識不明。何日も目を覚ましません。例によって、坊主、祈祷師、陰陽師。
 道隆、道兼、道長、三兄弟は交代で枕頭に侍ります。ある日、道兼が見守る時、兼家がクワっと目を開きました。

 道兼には、人には言えぬ鬱屈があるようです。そんな道兼が、文の庫で書物の整理をしている為時(まひろの父)に声をかけました。
「為時どの、手伝おう」
道兼は聞いて欲しいのです。誰にも言えぬこと。
「私は父に嫌われておる」「小さいころから、殴る、蹴る、されておった」「私だけが」「兄も弟も、かわいがられていたのに」「どこに行っても、私は嫌われる」

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